はだかの王子さま
『王さまのヴェリネルラ!』

 デッキブラシ君!

『ゼギアスフェルさマ!』

 砂糖壷さん!

 見れば、そこに。

 ウチに住んでる、二十匹のゴブリンの子どもたちのうちの二匹が、転がるようにわたしたちの足元にやってきたんだ。

 扉も、窓も開いた気配が無く。

 ハンドや賢介みたいに、自分の姿を消してないのなら、そこらにおいてあった……何が変わったんだろう?

 急に殺風景になった扉辺りをみると……どうやら。

 茶色の花瓶と、花瓶の中で飾られていた真珠色の花に化けていたみたいだった。

 今朝運び来られ、堂々と置かれていた花瓶の場所を考えると、二匹とも一部始終を聞いていたらしい。

 デッキブラシ君は、漫画ちっくなドラ猫のような姿。

 砂糖壷さんは、白ねずみみたいな本性をさらして、わたしたちに向かって走って来た。

 そして、星羅を見上げると、必死に叫んだ。

『もう、良いでス。
 本当のコトせめて、ヴェリネルラには話さないト!』

 砂糖壷さん?

『もう、だまってるの、よくない!』

 これ以上、本当のコト黙ってたら、王さまのヴェリネルラもゼギアスフェルさまも、死んじゃう。

 なんて、叫んだのは、デッキブラシ君だった。

「……本当の、コト?……」

 ぎゅっと抱きしめている星羅の胸を押して、隙間を作り。

 彼の顔を見上げると。

 星羅は、辛そうな表情はそのままに、首を静かに振った。

「真衣に話せる『真実』は、もう無いよ」

『ウソっきゅ!!』

 星羅の言葉に、砂糖壷さんが叫んだ。

 それを聞いて、デッキブラシ君が、ドラ猫姿のまま。

 ふわん、と、わたしの目の前に浮き上がって言った。

『十年前のよ~る~!
 マスターファングが、0と一緒にビッグワールドと、こちらの世界を隔てる『壁』を切り裂いたよ~る~
『フェアリーランドの扉』ができて、みんなが忙しかった日~~
 おれたち、そこに、居たもんな!
 なぁ!? うきゅきゅ!』

『ソゥ!』

 砂糖壷さんも続いてふぁん、と浮き上がって来た。

『ワタシたちのオ父ーサン、前の王さまに捕まっちゃったカラね。
 返してもらおート思ったノ。
 だから、ぴぎゅぎゅと一緒に前の王さまの宮殿に行ったら……見たノ~~」
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