はだかの王子さま


『……! 君たち! まさか!』


『……何を見たの?』


 偶然。

 星羅とわたしの声が重なった。

 それを、砂糖壷がねずみっぽい耳を、ピコピコって動かして、聞くと。

 星羅の方にお尻を向けて言った。

『ワタシたち、宮殿についたトキ!
 前の王さまとお后さま、血をいっぱい流して、倒れてタのを窓の外から見てタ』

『そうそう!
 カギ閉まってて、部屋には、入れなかったけどな!
 おれたちちゃんと見てた!
 ゼギアスフェルさま、後から来て、びっくりしてた~~
 だから、ゼギアスフェルさま、ヴェリネルラの本当~~のお父さんとお母さん、殺してない!
 宮殿に火をつけたのは、ゼギアスフェルさまだ~~け~~ど~~な~~!』

 ゴブリン二匹は、空に浮かぶと、くるくる回りながら言った。

『『ゼギアスフェルさま、悪くない♪
 悪いのは、先に、王さまを傷つけたヒト!!』』

 声を合わせた二匹のゴブリンの声に、星羅を見れば。

 彼は、静かに目を伏せた。

 ゴブリンの言ってること、本当ってことだ……!

「星羅……! それ、本当に!?
 なんで、そんな大変なことを、自分がやった、って言ったの!?」

 だって!

 星羅の悲しみは、まずそこから始まったはずだった。

 もし、最初に、星羅が自分は、前王夫妻を殺してないって、はっきり言っていれば。

 魔法使いに獣の姿にされなくても良かったし。

 こっちの世界に追放されることもなかったはずだった……のに。

『ゼギアスフェルさま、実は、本当~~の犯人知ってル?』

 そう、砂糖壷さんがクビを傾げれば。

 デッキブラシ君は、くるりくるくると、空中回転して言った。

『おれたち犯人知ら~な~い~~
 でも、賢いゼギアスフェルさま。
 犯人判って、かばってる?』

『『そんな感じする~~!』』

 砂糖壷さんと、デッキブラシ君の二人がかりの声に、星羅を見れば。

 彼は、深々とため息をついてた。

「……そか。あの時。
 君たち、窓の外にいたのか」
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