はだかの王子さま
「フルメタル・ファングとは、もうその時点で長い付き合いだったからね。
ファングより、先に生きている前王夫妻に出会ったとしたら。
前王は僕が、確実に殺していた。
このまま、真実を暴いてフルメタル・ファングを処刑台に送るのなら。
僕がその罪を被ろう、と思ったんだ」
「でも、お父さんの罪を被ったために、人間の姿を封じられたり……ビッグワールドを追放されることになっても、良かったの?」
恐る恐る聞いたわたしに、星羅は寂しく笑った。
「……たまたま、前王夫妻は、僕が直接手を下さなくて良かったけれど。
そこに至るまで、もう何人も……何人も『暗殺者の仕事』って言うやつをこなしていたからね。
今更二人分ぐらい罪が増えても、そんなに変わらないよ。
前王夫妻は、身分が高く、ビッグワールドに大きな影響が出たから、すぐに獣の姿にされてしまったけれど。
あのまま、ファングの分の罪を被らず、ビッグワールドに残っていても、遠からず獣の姿になっていたよ」
同じ、獣の姿でこちら側に追放されて、白薔薇宮殿内の迷宮をさまよわなくてはならないのなら。
真衣に会えた分、ファングを助けて正解だったよ、って星羅はそっと笑った。
「じゃあ……なんで、お父さんが……前王夫妻暗殺なんて……したんだろう?」
とても信じられない。
改めて出てきた疑問に、星羅も首をかしげながら言った。
「真衣だけじゃない。
実際に遺体を確認した僕以外。
フルメタル・ファングを知る者は、全員。
彼が、前王夫妻を殺した、とは思わないよ。
貴族のファングが前王を殺しても、いきなり自分が王に成れないのは知っていたし。
ファングが今までに唯一愛した女性は……前王の后(きさき)だったんだ。
前王を殺して、后を奪い、二人で手に手を取って逃げるならともかく。
彼女まで殺す理由はない」
「え……」
驚くわたしに、星羅は、頷いた。