はだかの王子さま
 言って星羅は、デッキブラシの柄の中ほど辺りを持って、軽く振った。

 とたん。

 デッキブラシが、変わる。

 細かった柄が、どんっと十倍ぐらいに広くなり、針金みたいな固そうな毛が、もさっと生えた。

 お父さんが見つめてた辺りの柄の部分に、凶悪そうな目がギロリ、と出現し。

 次に、牙がずらっとならんだ口が、どばがっ! とばかりに出現した。

 これは……小さくても、猛獣だ。

 だって、あの歯!

 トゲトゲした牙がびっしり生えた口は、耳まで裂けてるし!

 ばごんって生えた、太い腕の先の三本指には、鋭く鉛色に光る爪がついているし!

 これ、絶対凶悪肉食獣の顔してる!

 びっくりして声も出ないわたしに向かって威嚇する気になったらしい。

 元はデッキブラシだったゴブリンは、大きな口を開けて、吼えるために息を吸い込み……!

 ……鳴いた。



 ぴぎゃー

 ぴぎゃー



 泣きだした。


「……へ?」

 もっと凶悪で強そうな『ぎゃおおん』みたいな、咆哮が来ることを予測してたのに。
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