生き残れ!主従ゲーム
「アテナさんあれ、何ですか?」
「…ん? コレーは跳ね橋を見たことがなかったか?」
「はねばし…?」
「まあ、要するに歩く部分が上がってるんだよ。下せば普通の橋だ、多分どうにかして下せば渡れるはずなんだが……」
初めてみたのか珍しそうにしげしげと橋を見つめるコレーは、橋の近くに鉄で出来た装置のようなものを見つける。アテナにあれは、と尋ねるとでかしたといわんばかりにコレーの頭を撫でたアテナが装置に近づいてみる。
間違いなく、橋を上げるためのレバーの装置だったのだが見た目がお粗末なので、どう見ても鉄の塊にしか見えない。目が良いとはいえよく分かったなと感心していたアテナだが、余裕を持つためにも早く進めることに越したことはない。
素早く駆け寄って、装置の状態を見ながらアテナは口を開く。
「多分、このまま回したら橋が上がるはず…」
「わあ! じゃあ、頑張って回しましょう!」
「そうだな。錆びてるみたいだけど、多分何人かは使っていったはずだから回るはず……っと」
「うんっ…んーっ! お、重いですねアテナさん…」
「だな、っと……でもゆっくり回ってる…みたいだ…っと」
装置をなんとか回し切って汗を拭ったアテナの耳に金属の鈍い音が聞こえる。橋が上がるだろうと、コレーにも少し離れるように言ったアテナ下ろしていた髪を上げて一つに結んだ。
次第に、音を立てながら跳ね橋が降りてしっかりと渡れる状態にまでなった。
「よし。行こう」
「はい!」
橋を一気に駆け抜けて、林を抜けるより前にあったような寂れた町が再び見えてくる。
行き先がどんな場所なのか、ということをまったく聞いていないのだが風景が変わっていく度に目的地へと近づいているような気がして二人を元気づけていた。
しかし、二人が街中に入りそのまま走り抜けようとした時だった。
アテナは思わず顔を顰めながら、立ち止まった自分よりも先へ行こうとしたコレーの腕を取って止める。
自分の後ろに庇うようにコレーを下げ、険しい表情を隠すことなくキョロキョロと辺りを見回している。普通に町の人間しかいないように見えるコレーには、何を探しているのだろうといったところ。不思議そうにしながら、アテナの袖を引っ張った。
「アテナさん? どうかしたんですか」
「……コレー、落ち着いて聞くんだぞ?」
「は、はい。なんですか…?」
「……何人か、得物か武器を持ってこちらを見てる」
「え……?」