生き残れ!主従ゲーム


アテナの言葉に驚いた様子だったコレーだが、落ち着けと言われたことを思い出して口元を押さえながらゆっくりと背後を見る。誰もいないようにしか思えないのだが、アテナに言われてこちらを見ている人間を探すことに神経を集中していると、確かにピリピリとした視線を感じることに気が付いた。
しかし、それもずっとのことではない。気づいたアテナの勘が鋭いのだとコレーは顔を上げてアテナを呼ぶ。


「あの、アテナさん…」
「どうしたコレー、怪しい人間を見つけたか?」
「それとは、少し違うんですが…」

コレーはアテナに抱っこして下さい、と言うとアテナは笑って抱き上げる。高くなった位置を利用してアテナにこっそり耳打ちすると、アテナは少し考えてから頷く。
提案したのは何処かの店に入らないかということだった。こちらを監視する目があるなら外にいるより何処かに入った方がその主を見つけやすいかも知れない、そういうことだった。

時間に余裕がない二人にとっては少しばかり悩む所ではあったが、身の安全を確保することも大事だという結論になったらしい。


「この時間か、夕食を食べるくらいなら怪しまれないかも知れないが……宿に入ればさすがにバレるだろうな」
「えっ、どうしてですか…?」
「私たちは宿を使うほど時間がないから…夜中に目的地に着きたい人間は宿に用がないだろう?」
「なるほど、じゃあ…何処に?」

任せろ、といったアテナが足を踏み入れたのは少し進んだところにある武器屋だった。
もちろんアテナにもコレーにも武器を購入する予定はないのだが、何やら策がある様子のアテナがコレーの手を引く。
その表情は焦っているようではあるものの、どこか状況を楽しんでいるようにも見えた。


「…邪魔するよ」
「おう。………あ? 姉ちゃん子連れか?」
「おいおい、耄碌するには早いんじゃないか? 親戚の子だよ」

並んでいるとおかしい物でも見るような目でアテナとコレーを見比べている店主に、アテナは呆れ顔で肩を竦めていた。冗談として受け流しているらしい、相手が本気かどうかは別として。
コレーは知り合いでもないのにこういう会話ができるものなのかとじっとしたまま会話を聞いていた。
アテナは置いてある剣などを眺めている様子だが、実際は武器を見ているのではなく店内の広さと人がどのくらいいるのかを確認しているらしい。

「……奥に二人か」
「何だ姉ちゃん、欲しいモンでも」
「おい、お前」
「うお…ッ!」

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