あなたの隣は…(短編集)
どうぞ、と声をかけるとソッとドアが開いて男の人が顔を覗かせた。
「お兄ちゃん!!」
皐月ちゃんがベッドから飛び降りて、男の人の元に走って行くと男の人は両腕を広げて皐月ちゃんを迎えいれた。
「皐月、探したぞ。」
「うん、歌ってたの!」
皐月ちゃんは男の人の腕の中、私の方を指さしながら悪びれた様子も無く嬉しそうに言った。
「あ、すみません、妹がお邪魔して…」
18~25歳くらいのその皐月ちゃんのお兄さんは、茶髪の頭を勢いよく私に向けて下げた。
「あ、いえ。私も楽しんでいるので、お気になさらず。」
私が両手を顔の前で左右に振ると、お兄さんは安心したように顔をあげた。
そして初めて目と目を合わせた。
お兄さんは驚いた顔をした後、パッと手で口を押さえた。
皐月ちゃんは、そんなお兄さんに気づかずに、お兄さんの腕を引っ張って私の近くまで連れて来た。