僕はショパンに恋をした
「へたくそね。」

振り返ると、栗毛色の髪をした、若い女性がたっていた。

彼女は、まじめな顔で言った。

「へたくそだわ。それじゃあ、レコードとかわらないわ。」

若い霧野は、かっとなって立ち上がった。

「だって、あなたの音は、心がないもの。感情はこめているけれど、心がないのよ。」

霧野が口を開こうとすると、さらに言った。

「誰の為に弾いてるの?」

これが生涯最愛の人となる、ジーン・ウェスティンとの出会いだったという。

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