僕はショパンに恋をした
朝食まで部屋で食べれるのかと、嬉しそうに驚くシオンは、楽しげに女将と話をしていた。

まるで何年も前からの知り合いみたいに。

何とも不思議な奴だ。

朝食後、すぐに出発した。

女将は名残惜しそうにしていたが、お礼を言って旅館を後にした。

京都駅から宇治までは、電車で移動することにした。

どよっとした天気。

何層もの雲が、重なっている。

風が強いのか、雲は入れ代わり立ち代わり、その姿をかえていた。

宇治駅で降りて、歩いて目的の家を探す。

昔はもっと田舎だったと記憶していたが、とてもきれいな町になっていた。

どこかしこから、お茶を挽いた、良い香りがする。

シオンは、鼻をくんくんと鳴らし、香りを楽しんでいるようだ。

ほどなくして、家は見つかった。
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