先輩とあたし【完】

「准弥…」一人の女の先輩が稲森先輩の名前を呼んだ。
私は自分の顔を隠すように下の方を見た。
「何しとんねんって聞いとんねん」女の先輩の胸ぐらを掴みながらすごい剣幕の稲森先輩。

なんで…なんで…先輩が居るんよ…
なんで私に構うんよ…
いつもからかってくるやん。
そんな剣幕で怒るの見たら気になるやん…

「じゅ、准弥…あんな、この子がほら前さ、うちらにぶつかってきてさ…謝らんかったから…」女の先輩の声はどんどん小さくなる。だって稲森先輩の目がすごく怖いから。

「は?意味分からんねん。お前ら、自分が女やから何もされへんとか思ってん?そんなん手加減せーへんぞ。サッカー部のマネージャーどついてるてみんな知ったら全員が黙ってないわ。」私はコンクリートの上で震えていた。

怖いとかじゃない。助けてくれたから…救いに来てくれたから。稲森先輩の優しさが私の心に響いたから。


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