規則の守護者
瑞緒はにこりともしない。


「……すみません」


弱々しく謝る茜。


監視班で、真剣に働いているのは瑞緒と茜だけだった。

他の監視者は働かない。
高井瑞緒は笑わない。

茜がやる気を見せた時しか笑わない。


「すみません、僕は」

「いいから」


茜は瑞緒の期待に応えたかった。

情けなくて謝る茜に、瑞緒は膝を折って目の高さを合わせる。
そうして、微笑んだ。


「あなたは悪くないわ。
悪いのは違反よ。

私は、あなたが精一杯頑張っていることを知ってる。

だから今は、ゆっくり休んでね」


安心したのか、嬉しかったのか、茜はふっと頬を緩める。

そうして、唐突にささやいた。


「やっぱり高井さん、笑った顔がいいです。

……よかった」


突然の言葉に瑞緒が目を丸くすると、茜は満足そうに微笑んで、そのまま目をつむって寝入ってしまった。



< 113 / 139 >

この作品をシェア

pagetop