規則の守護者
引き金にかけた茜の指が、ぴくりと動く。


……お前達が違反をするから、先輩は死んだんだ。

違反を指摘されても悪びれない男達に、茜は怒りが沸き上がるのを感じた。


「……銃を置け」


だが、動いたのは、指ではなかった。

念じるように告げた茜を哀れむように、男がまた1歩、近付いてくる。


「怖くて撃てないんだろ、兄ちゃん」


……怖い?

違う、と茜は思う。

茜は違反者が憎い。
撃ちたくてたまらない。

なのに、なぜか撃てない。



『島崎は、殉職したよ。
テロリストに撃たれたらしい』



……ああ、そうか。

茜は思い出す。

……先輩は、撃たれて亡くなったんだった。



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