規則の守護者
夜の湿った風が、路地を通り過ぎていく。

その風に、固い足音が乗って聞こえてきた。


「銃の所有は禁止。
今すぐ銃を手放しなさい」


凛とした、強い声だった。

茜のすぐ隣には、まっすぐ延びる腕。

迷うことなく、銃を握る男へ銃口を突き付けている。


「……高井さん」


茜がつぶやくと、最年長の男は、後ろを振り返った。


「お前ら、銃を置け。
こいつは撃つ女だ」


そうして再び、男は瑞緒の方へ向き直る。

瑞緒は、苦々しげに言う。


「あなた、峰岡冬嗣ね。
前にも銃を売買していて、私に取り締まられた。

見つかった時だけ、手放せば良い……とでも思っているの?」

「驚いたな、その通りだ」


のんびりと、最年長の男、峰岡冬嗣は答える。

瑞緒は銃を、構えたまま。


「あなた、また、規則を破るのね」


低い瑞緒の声に、茜はわずかな感情が流れるのを感じた。

悲しみ、だろうか。



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