神の森

 優祐は、光祐に八千代のことを報告して、

桜山への道案内の許可を申し出た。


「全く知らない方と二人だけでは心配だから、爺にお願いしてごらん。

 桜山までの道は、ご年配の方の足では大変だろうからね」

「はい、父上さま」


「優祐だけでは、心配だから、祐雫も一緒に行って差し上げるわ」

 祐雫は、わくわくして横から口を挟んだ。


「ご案内が終わりましたら、一度、お屋敷へお連れしてくださいませ。

 山歩きでお疲れでございましょうからご休憩していただきましょう」

「はい、母上さま」


 祐里は、胸の内がざわめいていた。

 優祐を道案内に出してはいけないような気分になりながら、

それでいて出さずにはいられないような宿命を感じていた。

 胸の内のざわめきは何時までも治まらなかった。




「祐里、気になることでもあるの」

 光祐は、寝室で、神妙な表情の祐里を気遣った。


「何故でございましょう。

あまりにしあわせ過ぎまして、空恐ろしゅうございますの。

 光祐さま、どうぞ祐里を離さないようにしっかりと抱いてくださいませ」


「しあわせなことはよいことなのだから、何も心配しなくとも大丈夫だよ」

 光祐は、優しく微笑んで、怖がる祐里を力強く抱きしめた。



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