誰よりも愛する君へ
梨華はアタシの手を握りながら「大丈夫だよ」って何度も言ってくれた。


海からの風がもろにあたる堤防の上でアタシは声を上げて泣いた。


アタシがしゃべるくらい落ち着くと梨華が携帯で薫に連絡をとった。

しばらくすると堤防の近くに車が止まった。

「ハル、行こう」

梨華はアタシを立たせると手を繋いで堤防の上を歩き出した。

涙の後に風があたって顔がすうすうした。



車の中ではケンがスヤスヤと寝息を立ていた。

アタシは梨華に膝マクラをしてもらった。

泣き疲れて、薄くなる意識の中でアタシの耳に聞こえた優斗の名前。

アタシは寝ながら泣いていた気がする。


優斗ーーーーーー
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