内緒の課外授業
肩を竦ませ,リオは龍の方を見る。
ちゃりん,という音と共に,龍の右手が掲げられる。
そこには鍵がぶら下がっていた。

「教室の鍵を閉めなくちゃいけねぇから。
葉月が来るまで待ってたんよ」

愛嬌のある無邪気な笑顔を向けられ,リオは不覚にも
ドキドキしてしまう。

「すっすみません!委員会が長引いてしまって…」
「いーのいーの。委員会お疲れ」

そういって龍は机から降りると,黒板の前を通り過ぎ,
前の扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。

「ほら,急げー。帰り暗くて危ねぇから」
「はっ…はい!」

リオは急いで机の中の教科書類をカバンにつっこみ,
龍の待つ扉に走った。
龍の前を通り過ぎ,教室を出ようとしたとき-…

カシャーン・・・
リオはふり返り,鏡を落としてしまったことに気づく。

慌ててそこにかけよると,龍が拾いかけてくれていた。
「なんか落としたぞー…ほい」

龍が身体を起こし,リオは硬直した。
顔の数センチ前に龍の顔があったからだ。

「あっ!す,すすすいません!あぁありがとうございますっ」
急いで鏡を受け取り,再び硬直してしまう。
声が裏返って変な声が出た。
端正のとれた顔が目の前にあり,ドキドキが止まらない。
顔が火照っていくのが自分でも分かる。

そんなリオに龍は,
「ぷっ。なに慌ててんだよ。別に襲いやしねーから
安心しろ」

「え…襲う…?」
リオは赤い顔のまま龍を見上げる。
そんなリオを面白いといったかのように,
「ん?襲ってほしいんだ?」

と,不適な笑みを浮かべ,挑発的な口調で言った。

「そっそんなわけないですっ!」
リオは意地になって自分にも言い聞かせるような口ぶりで言う。
-先生…なんかいつもと違う感じが…-


「ん~。ホントかなぁ?」
龍は意地悪な表情でリオの顔をのぞき込む。
「~~…っ!!///」
本当は龍に抱きしめられたい。その広い胸に抱かれたい。
リオはガマンできなくなり,ぎゅっと手の中の鏡を
強く握った。

「…ってウソだよ。自分の生徒襲うわけねーだろ」
ぱっといつもの調子に戻って龍は笑う。

「い…」
「ん?」
リオは小さな消え入りそうな声で続ける。

「そ…その…先生なら…いいです」
「…え?」

きょとん,と龍はリオを見返す。
しかし龍はそれを冗談だと受け取ったのか,









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