俺様王子の初恋
「 ・・・そうですね 」
「 は? 」
意外な返事に彼は顔を上げた。
頬に添えられていた手は腰に
まわされて、更に距離が縮まる。
「 いい女ですよね、一之瀬さんて 」
「 ・・・バカなことは考えんなよ 」
よく分からない会話の中
私は自分の心臓の音が煩くて
聞こえてないか心配で
気が気じゃなかった。
「 佐野基樹[サノ モトキ]です。
覚えておいてくださいね 」
”一条泰雅先輩?”
威嚇するような彼の声。
同じクラスの佐野くんは
こんな人じゃない。
クラスメートなだけで
それほど関わりはないけど
明るくて気さくな人。
今みたいに、挑発なんかを
するような人ではない。