名前の無い物語
吉野は少し俯いた
「俺、自分の気持ちが分からないんだ。何をしても、何も感じない。『友達』も、俺の周りには居なかった。」
どこか空虚な世界
白黒に見えていた毎日
皆が言う、『友達』の意味
「…お前はもう知ってるよ。」
「えっ?」吉野は顔を上げた
帆志は自分の胸を指差す
「海や柚歌に出会って…俺達に出会って、お前の心は…とっくに知っている。」
「心が…。」
俺は胸に手をあてた
心は、もう知っているのか?
「ゆっくりで良い。自分のペースで、お前が過去を乗り越えて気づくだけだ。」
ニッと笑って
帆志は部屋から出ていった
「…過去を、乗り越える。」
俺の過去
俺はお守りを手にとった
ーー何があっても、必ずここに帰ってこれるようにーー
「…一体、誰だっけ?」
聞き覚えのある声に
吉野は空を見上げた