名前の無い物語
どこを見ても
階を示すものも、扉を開閉するボタンさえそのエレベーターには無かった
「壊れてんのか?」
「ここまで来てそれは無いだろ…。」
第一、來に間違いがあるとは思わない
それに箙さんは俺達が望むところに辿り着くと行っていた
なら、ここが天空への塔であることは間違いないのに…
「…なぁ、これは?」
吉野が指差した先には
普通ならボタンが存在している筈のところにある、取手のようなもの
何でエレベーターに取手が…?
てか、取手要らなくね?
「待った。下に何か書いてある。」
空の言葉に、全員がしゃがみこんだ
取手の下には、何やら不思議な文字が書かれている
「何語だよこれ。」
「…天使専用の言葉か何かか?」
海の世界では見たことがない文字
恐らく、天界でしか使われていない文字なのだろう
天使との交流を途絶えた今となっては…それを読める人間など一人もいない
「海、読めない?」
「…悪い、俺には読めない。」
「…『供物を捧げよ』。」