「紫苑は真奈(まな)にそっくりだ。ほら、これが真奈だ」


父親…父さんは、私達に真奈(母さん)の写真を見せた。
その写真には、私と母さんが写っていた。


「今の紫苑そっくりじゃんか…」


律が口を開けて、ビックリして言った。
確かに、姉妹みたいに似てるよ…。
すごい似てる…。


「紫苑、お前に会ったら、渡しておきたかったんだ、これを」


父さんが差し出したのは、アルバムらしき物。
そして、表紙には“紫苑へ”と書かれた手紙。


「真奈が死ぬ前に、未来の紫苑に書いた手紙だ。真奈の気持ちが詰まってる」

「俺も読んだんだけど、母さんね、姉さんのこと大事にしてたんだ」

「捨てた奴が、今更大事にしてたとか意味わかんねぇ」

「…律、家族関係に口を出すな…」

「…ゴメン…」


いわば、天国からの手紙だね。
こんな手紙、昔の自分だったら、破り捨てたかもしれない。
だけど、今の私は、昔とは違う。
過去を受け入れて来たんだ。
今更、傷付いたって、責めたって、何の意味もないんだ。


「手紙は、後で読むよ。アルバム…見よ」


今手紙を見る必要ない。
私一人で読みたい。
律がいると、手紙に文句付けそうだし。


「うわ〜っめっちゃ可愛い!」

「紫苑ヤバ…」


二人が興奮しているのは、私の昔の写真。
…私の目って…でかくない…?


「昔も可愛いが、今は美人でいいじゃないか」

「確かに!」

「父さん流石!」

「アハハハ……」


なんか、幸せな気分だなぁ。
こんなに笑い合ってるの。
母さんはいないけど、家族ってこんな暖かいもんなんだ…。
今、改めて知ったかも。


…―


「今日はありがと。アルバムと手紙、大切にするから」

「また、遊びにおいで」

「うん!」

「お邪魔しました」


私と律は、頭を下げて伊織ん家を後にした。
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