亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
枝の先が五、六本に枝分かれした。
それらはベルトークの上で分散し………彼の身体を覆っていく。
視界は暗くなっていて、何も見えなかったが、枝が手足に纏わりついてきたのが残り僅かな感覚で分かった。
目の前に、指よりも細い枝が伸びてきた。
何も映さない瞳でぼんやりと見詰めていると………。
そこに、見えたのだ。
何故かはっきりと。
匂い立つ……漆黒の、花が。
「………」
小さな花は、精一杯美しく見せようと花弁を開き、甘い馨りを漂わせている。
彼女の、花だ。
私が育てた、綺麗な…。
「………………………………………フ……ハハハ………」
ベルトークは小さく笑った。
何故だろうか。
何故……私は笑っているのだろうか。
彼女はもう、帰ってはこないのに。
「…………………………死ぬなら………貴女の側だ………………………………マリ…………ア………」
漆黒の花で埋め尽くされていく。
開いたままの瞳から、光が…………消えていく。
黒い花を咲かせた真っ赤な枝は、まるで飢えた獣。
貪る様に男の身体に何重にも巻き付き、絡み付き。
食らっていった。