亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
指先に纏わりつく枝は、太い枝よりも少し柔らかくて、冷たくて。
自分を食らうこと無く、いつまでも側にいて………それはまるで擦り寄って来る小動物の様で。
壊れかかっていた片目のレンズが、とうとう耐え切れずにフレームから外れた。
ひび割れたレンズは、血を吸ってこれまで以上に真っ赤になった赤土の上に、音を立てて落ちた。
「……マリア…………………………マリア……」
あの短かった………心地良い時間。
もっと早くに、気付いていれば…………もっと……幸せだっただろうか?
……もっと彼女を………抱き締めていられただろうか。
………ちゃんと愛せていただろうか。
何度か、身体を重ね………その度に…………………愛しさが増していった。
戸惑う時の慌て振り。
恥じらって真っ赤になる時の顔。
肩を震わせて泣き出す時の弱いところ。
優しい、柔らかな笑み。
作り物ではない。
本当の。
本当の、彼女。
貴女が許してくれても。
私は……後悔し続ける。
「……………私を………食らえ…………………………殺してくれ」
細い枝は、ベルトークの頬を撫で、覗き込む様に頭上に伸びた。
「……………良いんだ………マリア……………良いんだ……………」