亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
真っ赤な碑石は、垂直に両断された途端。
赤く冷たい液体が、激流となって溢れ出した。
「―――っ…!?」
目の前にいたローアンは全身に被り、流れに足を取られない様に体勢を整えた。
石を斬った剣は、柄から先がドロリと溶けていた。
溢れた液体は玉座の下を流れ、部屋の中央辺りまで流れていき、謁見の間を水浸しにした。
離れた所から見守っていたルアとトゥラは、本能的に液体を避けながら後退していた。
「………?」
剣を溶かす奇妙な液体。ローアンは肌に直接触れてしまったが………一見、何ともなかった。
………ただ…ジワジワと服の袖口や襟元が溶けてきている。
「………普通の人間が被っていたら……どうなっていたんだか…………」
目もあてられない有様だったろう。
…その途端。
―――ピクリ、と………二匹は同時に頭を上げ、開け放たれた扉の向こうへと視線を移した。
「………どうした…?…………………………………何だ……?」
二匹の元に駆け寄ろうとしたローアンの足が、ピタリと止まった。
―――奇妙な音が、廊下の向こうから…何度も壁に跳ね返って響き渡ってくる。
………遠吠え………呻き声…………?
…………城内ではない。
これは…。
「………………外から……」
戦場となっている荒野からだ。
………碑石を破壊した今………どうなっているのだろう…?
(………嫌な予感が…する)
…影以外にも、クライブに捕まった際に上空から見た、あの召喚獣もいるのだ…。