亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
笑顔だったイブは、ローアンの姿を見るや否や今にも泣きそうな表情を浮かべた。ドレス姿であったせいか、傷付いた彼女はより儚げに見えた。
「お怪我は………」
アレクセイが手を添えて起こしてくれようとしたが、無用だ、と首を左右に振った。
苦しそうに肩で息をするローアンは、顔を上げるなり………切羽詰まった様な声音で、言った。
「……………キーツは……?」
ローアンの視線は性急に彼の姿を探し求め、目前で依然として荒れ狂う竜巻に行き着いた。
「………あそこに……………あの……………中に…………」
その場で直ぐに立ち上がると、フラフラとした足取りでローアンは歩を進めた。
その頼り無い隙だらけの背中に、イブがしがみついて制止した。
「―――隊長!!……近付いたら駄目だよ!今、ダリルがなんとかしてるから!」
「…………早く………助けないと………………………苦しんでる………っ………!」
………鈍痛が、身体の節々に走った。
………今になって、痛みが、蓄積された疲労が襲いかかってきた。
ガクッと地面に膝を突きそうになったが、なんとか堪えた。
「…………離れて下さい……ここは危険です」
すかさず側に寄って身体を支えたリストは避難することを促すが………ローアンは何も言わず、剣の柄をより強く握った。
………見ていることしか出来ない。
自分に出来ることは、今は何一つ無い。
………目に見える所にまで来たのに、その姿は、見えない。
「―――……キーツ…!!」
見えない彼に向かって、ローアンは叫んだ。