亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………空耳かもしれない。………質の悪いこの風が、上手く化けた幻聴かもしれない。同情した神が聞かせてくれた、最後の……心地良い響きかもしれない。
俺の名を呼ぶ、か細い………。
………彼女の………声が。
………
………
…………いるのか…?
………君が、いるのか…?
「―――今だ」
小さく呟くと同時に、ダリルは目にも止まらぬ速さで、巨大な竜巻のとある一点に向かって…………剣を、投げた。
躊躇いなどある筈も無く。
己も、何もかも信じて。
音も無く、空気を切り裂いて直進する漆黒の剣。
吹き渡る突風に巻き込まれること無く、切っ先は一切の狂いも無く、ただ真直ぐに、主の元へ向かって。
剣の切っ先が黒々とした竜巻の壁に触れるか否かの寸前の所で……………刀身は白く輝いた。
……その先に、本の一瞬だけ開いた小さな風穴。
それは瞬きの如く直ぐに口を閉じていく。
…閉じる瞬間、真っ白な剣は吸い込まれる様に、切っ先から柄の先まで………全て、向こう側へと移り、閉じた風穴の先へと、消えた。
―――バチッ。
視界の隅で、火花が散った。