亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
キーツとイヨルゴスを取り囲んでいた竜巻の勢いが、徐々に落ちてきた。
肌に感じる突風が、柔らかな風へと変わり、結った髪を靡かせる。
黒い風が晴れ、だんだんと荒野の景色がはっきりと見えてきた。
………真っ暗な空はいつの間にか、漆黒の濃ゆさが薄らいでいた。
―――もう朝だ。
厚い曇り空が、少しずつ晴れ間を覗かせている。
舞い降りる黒い花吹雪も、一枚一枚のその輪郭が鮮明に見えるくらい、明るくなっていた。
………昔からそうだ。
………終わりはいつも、朝日が迎えてくれる。
いつもそうだった。
真っ黒な花びらが一枚、目前を舞うのと同時に………対照的な白い何かが、その後に続いて舞い降りてきた。
白い花?
………いや…………………これは………。
手を伸ばして触れた途端、その白はひんやりとした冷たさを残してあっという間に消えてしまった。
「……………雪……だ………」
漆黒の花吹雪と、純白の雪が、混じり合いながら、朝日の空を前に踊っている。
その光景は夢物語にでもある様な、とても……幻想的な、神秘的なものだった。
……………竜巻が、晴れていく。
…視界が、荒れ果てた荒野の景色で埋め尽くされていく。
―――…キーツは、無意識で……振り返った。
そこには、同じ様に晴れていく竜巻。
………晴れていく黒い景色の向こう側。