亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
黒と白が交差する視界の向こうに。
キーツは。
………真っ赤な、花を見た。
………高貴で、凛としていて……。
………しかし何処か儚げな……………真っ赤な、花を。
……もう、会えないと。
……見詰めることも出来ないと。
……声を聞くことも無いと。
…愛おしむことも出来ないと。
………思っていたのに。
見える所に、彼女がいる。
………幻では無い。
六年前とは違う。
彼女は、そこにいる。
何処にも行かないで、いる。
…………ローアンは、泣いている。
「……………ローアン……?……………ローアン………」
………痛みなど、知るものか。
会いたい。
声を聞きたい。
その髪に、頬に触れたい。
………その一心で、キーツは歩を進めた。
足を引き摺りながら、懸命に進んだ。
ローアンは掴んでいた剣を離し……フラフラとしながらも、彼の元へ歩んだ。
「…………キーツ…!」
一筋の涙を流して、ローアンはくぐもった声で名前を呼んだ。
………徐々に縮まっていく距離。
互いの姿がはっきりと見える程近付いてきた。
こちらに駆けて来るローアン見詰めながら、キーツは嬉しそうに微笑んだ。