亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――緑豊かなフェンネル。
他二つの大国から戦の火の粉が降り懸かることのなかった、三つの大国の内、唯一平和な国。
…ほんの十数年前まで。


―――王というものは、誠実な人間ばかりではない。

―――約二十年前、フェンネル王52世によって、最悪の悪政が行われた。

いつからか。狂人と化した王は、魔術師や魔法使い、占い師や予言者などの、所謂『魔の者』達を虐殺し始めた。そのため、とうとう魔術を使う人間は滅んだ。
………それから数年後、ある異変が起こった。


―――死人が黒い塊の化け物と化し、人を襲いだしたのだ。

死体は数時間経つと突然蝋の様に溶けだし、真っ黒な塊となる。それは地面をずるずると這い、闇に消えてしまう。
………そんな現象がこの国で起こる様になった。

―――そしてそれは害をもたらした。
………夜になると、暗闇から真っ黒な化け物が出没し、村を襲撃するという不可解な事件が引っ切り無しに生じた。
一体だけの時もあれば多い時もある。その姿は様々で、二、三メートルを超えるものもいる。
光や熱に弱いのか、松明を掲げると近寄らないことが分かり、どの村でも一晩中火を絶やさなかった。
………王はその対策に、死体は即時燃やすこと、としか命じなかった。


―――国民は、虐殺された魔の者達の呪いに違いないと噂した。
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