亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
悪政を行った王が狂気の沙汰に作らせたと言われている、とある碑石。
虐殺した魔の者達の血で染めた赤い石が、狂王が亡くなった後も、城の最奥に堂々と立っていた。

―――あんな碑石なんぞがあるから、元凶の王が死んでも、この様な呪いがいつまでも続くのだ。

―――王族はまだ……悪政を行っている……
………アレスがお怒りなのだ。



―――約五年前。

―――大国フェンネルの誇り高き戦力、“フェンネル国家騎士団”の、中でも最強と詠われた先鋭部隊が、クーデターを起こした。

前兆の無い、突発的でありながら計画性のある奇襲に並べ、その並外れた戦闘力により、国は味方によって滅亡した。

王族は女子供構わず、その血が通う者はことごとく皆殺しにされた。

………権力は先鋭部隊に移ったかと思われた。


―――しかし、亡き狂王の娘、その時王位を継いで女王の座にあったフェンネル53世は、虐殺される直前、城になんらかの魔法を掛けた。

城は一筋の純白の光を天に向かって放った。
―――城は意思を持ったかの様に、扉という扉を固く閉じ、見えない息吹によって中の先鋭部隊は城から放り出された。

―――無人の輝く城には、誰も入れなかった。見えない壁が拒んだ。

………呪われた碑石を抱いたまま。

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