亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
呆気にとられるトウェインに、トゥラは突進した。
「………うわっ…!?」
のけ反ったトウェインをトゥラはそのまま背中に乗せ、塔から飛び下りた。
視界から消えていくジスカの背中。
「………ジ、ジスカ!」
叫んだが、その姿はすぐに見えなくなった。
トウェインを退かせた後、ジスカは改めてキーツに向き直った。
キーツは無言でジスカを睨み付けている。
「………はっ!すまねえな―良いとこ邪魔しちまったみたいで―?………でもあれは無えんじゃねえの?………うちの隊長さんに破廉恥な真似はいかんよ~…」
「………ジスカ=バルバトス、か…」
ジスカはにやりと笑った。
「あれ?俺ってば結構有名?感激だなぁ~国家騎士団様様の長に覚えてもらえるなんて…………胸糞悪い」
ジスカの姿がふっと消えた。
同時に、構えた剣に伝わってくる衝撃。
“闇溶け”で一瞬で移動したジスカは、槍に片足を掛け、キーツを更に押す。
「―――俺は撤退するよ。………残念だなぁ…相手出来なくて」
すぐ脇に刺さっていたトウェインの剣を抜き、“闇溶け”で消した。
ジスカは押し合ったまま、ぐっとキーツに顔を近付けた。