亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……ぎらぎらと光るジスカの目は、憎悪と怒りが渦巻いていた。






「……一回言ってみたかったんだよ……」








意地の悪い笑みが、更に深くなった。






ジスカはぼそりと、低い声で囁いた。

















「―――俺の女に手ぇ出すな……」








「………!?」

ジスカを睨み付け、キーツは思いきり槍を押し返した。

くるっと大きく宙返りをする。………その先は何もない。ジスカはそのままキーツにひらひらと手を振った。

「……あーばよ!」

柵を越え、ジスカの姿は塔から消えた。



………言い知れぬ怒りと困惑が混合し、キーツはただその場に立ち尽くしていた。

影の群れはいつの間にか消えており、辺りは嘘の様に静かだった。
………敵のいなくなった荒野は、敵なのか、味方なのか、どちらの者か分からない屍が広がっていた。


















しばらくして………夜明けになった。








―――負傷者250、死亡者102、ワイオーンの損失15。
他、区別が付かない死体53。

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