亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ハニーブラウンの短い髪、透き通る様なオレンジの瞳。………全体的に明るい印象を持たせる容姿だ。
男は丁寧に父に向かって頭を下げた。片耳の赤いピアスがきらりと光った。
「お久しゅう御座います、ゲイン侯爵。……本日はどの様な用件で?」
「……大したことでは無いのだ。と言うより、私にもよく分からぬのだよ。国王に呼ばれてな」
「吉報であることを祈りますよ。…では、私も城へ向かわねばなりませぬので…また城でお会いしましょう」
男は再度頭を下げ、優雅な足取りで脇を通り過ぎる。
こんな紳士的な若者もいるのだな…とその長身を見上げていると………不意に、男がこちらを見た。
―――瞬間…………………この男………。
………にやりと意地悪く笑った。
………え…錯覚?
と呆気に取られたが、男はぱっと視線を前に戻してきびきびと歩いて行った。
………何だ今の………紳士が…急に…にやっ…て…。
「……ああ……キーツ坊ちゃまはお知りで無いでしょうね。同じく侯爵家の方ですよ」
「………侯爵?」
「ええ。ヴァン二侯爵の御曹司であります、オーウェン様で御座います。……あの様に非常に気品に満ちていますが…確かまだ15…」