亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

ハニーブラウンの短い髪、透き通る様なオレンジの瞳。………全体的に明るい印象を持たせる容姿だ。

男は丁寧に父に向かって頭を下げた。片耳の赤いピアスがきらりと光った。

「お久しゅう御座います、ゲイン侯爵。……本日はどの様な用件で?」

「……大したことでは無いのだ。と言うより、私にもよく分からぬのだよ。国王に呼ばれてな」

「吉報であることを祈りますよ。…では、私も城へ向かわねばなりませぬので…また城でお会いしましょう」

男は再度頭を下げ、優雅な足取りで脇を通り過ぎる。


こんな紳士的な若者もいるのだな…とその長身を見上げていると………不意に、男がこちらを見た。







―――瞬間…………………この男………。




………にやりと意地悪く笑った。






………え…錯覚?

と呆気に取られたが、男はぱっと視線を前に戻してきびきびと歩いて行った。






………何だ今の………紳士が…急に…にやっ…て…。


「……ああ……キーツ坊ちゃまはお知りで無いでしょうね。同じく侯爵家の方ですよ」

「………侯爵?」

「ええ。ヴァン二侯爵の御曹司であります、オーウェン様で御座います。……あの様に非常に気品に満ちていますが…確かまだ15…」
< 269 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop