亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

重々しい巨大な門は、ゆっくりと開いていった。

黒い服の家来達が車を導き、城のある丘の下の大きな屋敷の前で止まった。

降りる際、黒と緑の色合いの服を着たメイド達が集まって来た。

「よくぞいらっしゃいました、ゲイン侯爵様」

「時間がおありなら、謁見を申し出たいのだが…」

「畏まりました。ただいまお伝え致しますので、その間屋敷の方でお休み下さいませ」

髭を生やした大臣らしき老人は一礼し、足早に立ち去った。


そのまま父に続いて屋敷に入った。


入って見ると…驚いた。

中は普通の屋敷の構造とは違い、まるで四角い螺旋階段の様になっていた。

階段を一、二段上がるごとに、脇に扉が並んでいる。



(………隠れんぼには最適だけど………日常生活でこれはちょっとなぁ…)

軽いカルチャーショックを受けながら、奥へ通された。


屋敷の複雑な構造をじろじろ見ていると、いつの間にか父の背中が遠くにあった。

アレクセイがこっちですよ、とでも言いたげな顔でこっちを見ていた。


慌てて後を追う。









父は廊下の真ん中で立ち止まり、何やら誰かと挨拶していた。


ちらりと覗くと、向かいに立っているのは利発そうなまなざしの男だった。
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