亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
少しして、父と共に城へ向かった。アレクセイは遠慮してか、後ろの方にいた。
丘の城までは、緩やかであるが永遠と続く長い階段を上がらねばならない。
緑のカーペットが敷かれた階段を、父とは異なるリズムで昇っていった。
………父とアレクセイは慣れているのか、息切れ一つせず歩調を乱すことは無い。
……キーツはちょっとげんなりしていた。
階段の両端には、腰に剣を携えた騎士団の兵が銅像の如く並んで立っている。
漸く昇りきり、改めて背後の風景を見渡した。
丘の上から見えた景色は、壮大だった。
あんなに深く、広かった沈黙の森の先の谷まで見える。
国を一望出来る場所だ。
「……キーツ、急げ」
低い父の声が聞こえ、慌てて後に続いた。
城内は豪華絢爛、埃一つ無い空間だった。
大きなシャンデリアが天井に……床にも…!?………あ、違った。………床が鏡みたいに反射してそう見えただけか。
自分の屋敷も豪華な方だが、これ程きらきら光っている壁や柱は初めて見た。
たった今歩いて来た所に素早くメイドが走りより、砂埃や泥を拭き取っている。
………綺麗過ぎて……落ち着かない。