亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


目と鼻の先に、羨ましいほど綺麗なベルトークの顔があった。

訳が分らぬまま、マリアは彼のエメラルドグリーンの瞳を見詰めていた。


………吸い込まれそうな、深い瞳。







「………ベルトーク隊…」




















彼の名を、言い終えることは出来なかった。

マリアの口は動けなかった。


…否……動けないのではない。




………正面の男の唇で、塞がれたのだった。











―――柔らかい感触。


隙間の無い、合わさった互いの唇。時折、湿った吐息が漏れた。





………甘い味がした。












……身体に力が入らない。マリアは、頭が真っ白だった。




何も考えられない。何も。
















ふと、ベルトークは唇を離した。

熱い吐息が互いの頬にかかる。

目の前で自分を見詰める鋭い瞳は、何処か寂しげに見えた。







ベルトークはマリアから離れ、口を拭って背を向けた。




そのまま何も言わず部屋に入り、ドアを閉めてしまった。



重苦しい金属音と共にドアが閉まり、辺りは再び静寂と化した。







マリアはしばらく動けなかった。
< 444 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop