亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
咳き込もうとした口に、乾いた布の塊が押し込まれた。
両手は頭の上で縛られ、別の何者かに押さえ付けられた。
苦しさで涙を滲ませた視界の中、明るい満月を背に、三、四人のシルエットがマリアを見下ろしていた。
………一番前に立っている人間を見た瞬間、マリアは目を丸くした。
「―――なんだよマリア……そんな馬鹿みたいな顔しやがって」
月光に浮かぶ彫りの深い顔立ち。
不気味な笑みのその男は……………カザレだった。
マリアは呆然とカザレを凝視していた。
カザレの背後には、見知らぬ男の顔が並んでいた。
「………良いのかよ?こんな夜更けに一人で出て……………独り占めする気だったのか?小遣い稼ぎか?」
違う、と言いたかったが、口に入れられた布で喋れない。マリアは首を横に振った。
自分でも訳が分からない程、全身が震えた。
これは……何?
……………怖がっている?
………どうして…。
……………どうして……カザレは。