亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
二人の兵士は、あやふやながらもなんとか“闇溶け”をし、撤退した。


………部下に対してはべらぼうに厳しいトウェイン。ちなみに本人は自覚無し。甘い方だとか思っている。


たった独りになったトウェインは、這いながら様子を窺っている影達の中央で、再度剣を構えた。

トウェインの武器は、緩やかな線の刃を持つ、青竜刀に似た巨大な剣だ。柄の部分を合わせると、160センチも無いトウェインの背を易々と越す。

重さは約20キロ近いのだが、十歳の頃からこれで訓練を受けていたため、今はもう身体の一部の様に扱いこなせる。


先ほどまで滅茶苦茶に飛び掛かって来ていた影だが、今は間合いを詰めつつも、なかなか襲って来ない。

「―――どうした………臆することは無い。………………皆平等に、消してやる」

蠢く影の呻き声が、一層大きくこの森の中で響き渡った。



「―――よぉ~。…殺ってる―?」


………場違いな、調子が狂う声。“闇溶け”で背後に現れた友に、トウェインは舌打ちする。

「―――ジスカ…真剣にやれ」

ジスカは帽子を被り直し、不敵な笑みを浮かべる。

「心外だな~。………俺の可愛い部下が死にそうな顔して戻って来たから、心配して駆け付けたってのによ―」

「…なら、無駄足だったな」

ちらりとジスカを一瞥し、ふん、と鼻で笑う。
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