亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………辺り一面真っ赤。
血の海。

糸を引く生暖かい他人の血で、手の平は赤く染まっている。

私は震えている。


朦朧とする意識の中で、私は重い瞼を懸命に開けようと何度も瞬きを繰り返した。

………すぐ脇には、女性が倒れていた。

………悲しいのか何なのか、私は声もあげずに涙を流した。


立ち上がろうとするが、全く力が入らない。


僅かな明かりが照らすだだっ広い部屋。薄ぐらい視界に………自分を見下ろす人影があった。



―――………城内の魔力がおかしい………一刻も早くここから出ましょう。………その者はいかが致しますか……。



―――……女王の言った事が真実であるならば………生かしておかねばならんな……………連れて行く。



―――…連れて……。…この者などいなくとも……。



―――………『鍵』……だと女王は言った。………閉じられるのならば必要だろう…………私が連れて行く。すぐに出るぞ。……………乱暴に放り出される前にな。






大きな手が……私の身体をすくい上げた。屍の様に、身動き一つ出来ない私は、微かに残っていた意識が遠のいていくのを感じながら、冷たい闇に呑まれていった。






消えて行く。少しずつ。




過去というもの全てが。
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