亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

しかし………隊長に昇進してからは…あの方は私を避けるようになった。

……親離れしろということだろうか。

近頃は滅多に会えない。

「………私は…“娘”でありたかったが………あの方は違うのかもしれん…」

拾った子供。死に損ないのガキに、愛着を持つだろうか。
………少なくとも、あの方はそんな人ではない。


今の今まであの方を見てきたが………優しい瞳はいつも虚ろで…。
………激しい憎悪が渦巻いていた。

「………そういや…トウェインは何処の村の出身だったか?」

「………城下に近い…村……だったらしい」

「……らしいって…」

「……あまり覚えていないのだ。………こう…風景は思い出せるのだが…」

家畜の群れ、村の子供、農具を持つ老人………とぎれとぎれの、朧気な記憶。

………幼い頃の記憶は、それしか無い。十歳より前の記憶が欠落していた。

両親の顔も、霧を通して見ているかの様にはっきりとしていない。
………ただ、優しい声が聞こえて来る。

―――トウェイン…と。


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