亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――んでよぉ…あのおっさんの叱り方といったら…半虐待レベルだぜ」
「………ゴーガン隊長は厳しい方だからな」
「そんな簡単に片付けるなよ…」
かれこれ、もう二時間近く経っただろうか。二人は酒の入ったコップを手に、ずっと話していた。かなり飲んでいるのだが、双方とも微酔い気味である。
ジスカは椅子に座り、トウェインは向かいの古いソファに腰掛けていた。…このソファ、きっと高価な代物に違いないが、今は所々汚れ、破れており、見る影も無い。……部屋の主の扱い方で、こんなにも変わるのか…。
「………ゴーガン隊長とベルトーク隊長は…総隊長の元側近だったんだろ?まあ…今も側近だけどよ…」
「ああ………総隊長が国家騎士団にいた頃からのな……一番信用出来る部下だろう」
くいっと酒を飲みほし、空になったコップをテーブルに置いた。
「…一番って………トウェインも信用されてんじゃねえの?総隊長からすれば、娘みたいなものだろ」
―――クーデターが起きた約五年前。
まだ十歳だったトウェインは戦火に巻き込まれ、気がつくと、総隊長に助けられていた。
………それからはずっと、総隊長に育てられた。剣術、戦いの基本、獣の扱い方、この世の知識………。………父親同然だった。