亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………中は中で家畜小屋より酷い。


「………こっちだ。ぼさっとするな」

奥の方にいる男が、腐った床を指差していた。

………手を掛ける窪みがあった。男は手を差し込み、力を込めて床を引っ張った。


ギィィ…と鈍い音がしたかと思うと、床には人一人入れるくらいの穴が現れた。

………隠し扉?地下へと繋がっている様だ。

「………行くぞ。閉めて行けよ」





















何でもバターを斬る如く斬れそうな鋭利な剣。

ランプの明かりで妖艶に光るその切っ先が、一瞬で喉元にあてられた。

刃物のひんやりとした感触。


「………で、何だ?……この無反応なガキは………」

「………例の子供だ。……前に言っただろう?……影をたった独りで殺ったっていう…」

「ああ、な。………こんなガキが……か」

剣を握る手がふと下ろされた。

ダリルは前を向いたまま、傍らのこの男の容姿を感覚で探った。

…長身で筋肉質な男。歳は30前後といったところだろうか。
身体中、大小の傷が至る所に刻まれている。。足が悪いのか、片足を引き摺る様に歩く。

………灰色の澄んだ男の目が、ダリルを見下ろしていた。


この男の他にも、地下には人間がいた。
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