亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……死ねない?
この女……何を言っているんだ。
「………貴様は…死にたいのか?それとも……殺してほしいのか?」
「…………何言って…」
その途端、少女は腰の短剣を引き抜き、ダリルの前に放り投げた。
よく手入れされた、光沢を放つ真直ぐな刀身が、目の前に無造作に転がった。
「…………死にたいのだろう?…………望み通り…死なせてやる。………己で死ぬがいい」
自分で………自分を……………殺す。
考えた事もなかった。
…………死のうと思えば、いつだって死ねたんだ。
僕は………
死にたいのか?
殺されたいのか?
死に場所が欲しかったのに
何故だろう。
―――死にたくない。
怖い。
「………周りがお前の死を望む。………では、お前はどうなんだ?…………お前は、本当に死にたいのか?…………………結局、自己の弱さから逃げているだけではないか」