亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ピンと張り詰めた空気の中、ただ一人、キーツだけが呟いた。


「………封印が………解ける?……そんな…」

「………どういう事だ…?」


叩いても、切り付けても、どんな衝撃を与えても、びくともしない城を囲む透明な壁。

それが無くなる。固く閉ざされた城の扉が開く。

「………真偽は定かでは無い。………城の封印は、今は亡きフェンネル王53世の禁忌の魔術によって生じたもの。………六年の歳月を経て、今まさに解けようとしているのだ。………術が掛かる様を、総隊長は見ていた…」



「………だから奴は、封印が解ける事を知っているってか?……なるほどねぇ………表舞台に出て来ねぇ筈だ…………ってことは……それまでの奴等の襲撃は、来たるべき日のための長い準備期間………いや………暇潰しだったってことか……」

…胸糞悪い、とこの陽気な男にしては珍しく、苦虫を噛み潰した様な顔で悪態を吐いた。

「必ず立ち塞がって来る僕ら国家騎士団を、早めに潰しておこうと思っていただろうが……………解ける事を…分かっていながら…部下が死んでいくのを眺めていたのか?……悪趣味な………!」

……そういう人間なのだ。


「……部下である私も、それは知らなかった。つい最近知った…」
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