亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
裏切り者、という称号を自分から得てしまったのだ。


………いや………総隊長こそ、裏切り者ではないか。




…彼の手から………戻って来たのだ…。

私にとっても、彼にとっても…最早、敵でしかない。
………その彼の、悍ましい黒の魔力を、ひしひしと感じる。


格子の外で、ルアがクンクンと小さく鳴く。
………同じ様にこの不穏な空気を感じ取っているのだろう。

「………ルア…怖いのか?」

苦笑しながらルアの頭をクシャクシャと撫でる。窮地に立たされている様な心地がするが…トウェインは自嘲的な笑みを浮かべた。

「………私だって……怖いよ………しかし恥じることではない。……………自然な反応だ……」
















「―――……黒の魔術?」

暗い室内を、脇に置いた小さなランプの明かりがぼんやりと照らす。

厚く積もった埃が払われ、居場所を無くし、頭上からゆっくりと降りてくる。

「………ええ。間違いないでしょう。………ルーンの混じった古代文字の魔方陣…魔獣がやけに反応するのは、負の属性が影響しているからです。………となると、あれは黒の魔術でしょう。………忘れられた、古い古い魔術です」


資料や古文書の山の中、アレクセイとオーウェンはランプ片手に分厚い書物を睨んでいた。
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