亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
表紙には金で縁取られた不思議な形の文字が、つらつらと並んでいる。

それは古代文字とは違うもの。王族のみが読むことの出来る、凡人には解読不可能のアレスの文字だ。


書物の中身も同じ様に内容は分からない。何かの絵が所々載っている。

「黒の魔術、魔力と呼び名は様々ですが………種類も様々で御座います。中には王族にしか伝わっていない禁術などもありますが………昨夜のはそれとは違いますな。魔の者が扱う魔術によく似ております」

「………その聞くからに厄介そうな魔術を………クライブさんが昨夜に使ったって言うのか?………本当に奴が?」

「……それも…間違いないでしょう。きっと捕虜のお嬢様も同意見に御座いましょう」

「…………何なんだよ……あのおっさんは……まだ何も分かってないのか?」

「………まだ何も。………次の衝突までに、奴の素姓を明かす事が肝要ですな……」



敵の大将が、戦場に自ら出て来る可能性があると分かっている今、攻撃体勢も、その数も、戦力の分配も、大いに見直す必要がある。

そんな中、昨夜の不可解な事件が起こった。
得体の知れない魔術が発生したかと思えば、その使い手が問題のクライブと来た。


………彼自身の事について、もっと知る必要性が高くなった。
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