亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
――――ガンッ
――ルアは思わずのけ反った。
固く冷たい格子に、震える握り拳を叩き付ける。
頭を押さえながら、トウェインは格子をギリッと握り締める。
「―――………開けろ…!!……ここから……ここから…………出せ!!」
仄暗く深い地下で、トウェインは険しい表情を浮かべて、叫んだ。
「―――っあああ!!」
塔の頂上から丘の下まで数十メートルある高さを、リストは短剣を構えて…飛び降りた。
…落ちる最中、リストの身体に異変が生じた。
短剣を握る両手の爪が、先の尖った鋭利な刃へと変わり、口元には小さな牙が覗いた。
………風で煽られる前髪の内側で、大きな第3の目が瞼を開いた。
狙いは外さない。
真下の化け物に真直ぐ突っ込み、衝突寸前、リストは短剣を振り下ろした。
………肉を断つ時の生々しい感触が、両手に伝わって来た。
勢いと重力も加え、短剣は柄の方まで、黒々とした化け物の背に突き刺さった。
ズブリ、と思い切り短剣を抜き、身を翻して後退した。
ザザザッ…と砂埃を起こして着地する。
手元で両方の短剣をクルクルと回し、構え直した。