亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


………正面には、もうあの黒々とした怪物の姿は無かった。


代わりにそこにいたのは………長い真っ白な法衣で身を包んだ、三人の老人。

それらは宙に浮かび、トウェインにゆっくりと頭を下げていた。








『―――……我は………我らは……王に仕える元老院。……………アレスに仕える……城の守人………』






『………この時を………澱んだ貴女様の記憶の中で…………お待ちしておりました』






『…………あの憎き……裏切り者の手に掛かり……………御無礼を働いたこと…………深く……………御詫び申し上げます………』











「………………良い。………あの時以来だな……。………会いに来てくれて………感謝する。…………記憶はまだ完全ではないのだが………」














………三人の守人の姿は、徐々に薄らいでいった。

その向こうに、起き上がる日の出が見えた。


『…………時が迫っております……』

『………時は………避けられませぬ………あの男は必ずや……城を得ようと……力を出してくるでしょう……』

『…………王の血を引く姫君よ…………………………………どうか………御無事で…………………………』












―――すぅっと、三人は光に溶ける様に姿を消した。




白色の淡い光の代わりに、朝日が大地を照らした。


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