亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……………キーツは無言で、振り返った。
化け物の前には……その彼女がいた。
その後ろ姿は何度見ても、懐かしさを感じさせた。
「―――………我は………フェンネル王53世の………第三王女………」
トウェインは胸に手を添え、真っ黒な老人を見上げながら………はっきりと言った。
「……………誠の名……。…………………………………我が名は…………………………」
黒い魔方陣に、小さな亀裂が生じた。
「―――………ローアン=ヴァルネーゼ。誠なる、浮世の名で………ある」
―――カッ…。
純白の光が辺りを覆い尽くした。
暖かい空気が突風の様に吹き荒れ、荒野を駆け巡った。
不思議と眩しくはない光の中、トウェインは目を大きく見開いていた。