亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……随分と戦争の臭いに敏感な国だ。あちらもこの長い戦争に、多少なりとも興味があるのだろう。

少し前には、アレスの使者によって追い払われた様だが。………懲りない奴等だ。

「………まあ、魔術をかけてきたりでもしたら話は別ですが……。………こちらが何もしなければ突っ突いてこないでしょうよ。………それよりも、早く持ち場に戻りなさい」







―――…頭上のこの太陽が沈んだ時、決戦が始まる。

それまでまだ時間があるが………やけに早く感じる。
刻々と迫って来る『時』に、この荒野を取り囲むもの全てがピリピリと張り詰めた空気を帯びていた。
放ったワイオーンもいつもより機嫌が悪い。…と言うより、興奮している様だ。

………今朝から鳥の鳴き声もしない。




………何かを恐れてか、森や高原の小動物は皆姿を消していた。
気配が全く無いのだ。

「…………静かなもんだな。………まるで死んでるみてぇだ……」

オーウェンは磨き終わった槍の刃を日に照らし、その場で立ち上がってブンブンと振り回した。

……おし。切れも良い。………傷も完璧に塞がったな。上々だ。

………後は……。

「………運次第、か………………」

実力次第、とはいかない。悲しいが、全ては運次第なのだ。



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