亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

キーツはこのジスカという男が気に食わない。

……この男に初めて会った夜……去り際に言われた、聞き捨てならない言葉。

………今になって思い出すと………そりゃもう苛々する。

………第一この男、ローアンとはどういう間柄だったのか。

「………一つだけ訊く。…………以前お前が言った…………その…………………『俺の女に』」

「待った!!それ以上言うな馬鹿!!」

緩い態度から一変。急にワタワタと焦りだした。
思わず口ごもるキーツ。ジスカは頭を掻きながら溜め息を吐く。

「……………無し。………あれは無し。無かったことにしてくれよ。……………玉砕した失恋男には、あの台詞は人生の汚点だ。………恥ずかし過ぎる」





……そうか…玉砕したのか。


敵であると分かっているが……何だか不憫に思えてならない。




………うん。触れないであげよう。




「…………………………………………………………………殺り合う気か?」

「………………今…明らかに…わざとらしいまでに、瞬時に話題を切り換えたな。………お前良い奴だな……」

そんな事を言いながら、ジスカは槍を構えた。

良い奴だろうが何だろうが、敵は、敵。
しかもジスカにとって恋敵だ。


キーツはジリジリと間合いを詰めた。
相手はオーウェンと同じ槍使いだが、二本槍だ。
しかも緩い態度や言動とは裏腹に……かなりの使い手と見た。構えで分かる。



ジスカは相変わらず笑みを浮かべたまま、キーツをじっと凝視してくる。

「………良い野郎なのに…残念だ。言葉に出来ない位……残念だ。…………加えて俺に戦う気が無いのも、残念だ」

そう言って、ジスカは構えていた槍を下ろした。

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